国立国会図書館における障害者サービスのさらなる充実を求める要望 (2023年10月15日、なごや会提出)に対する回答    日時:2024年2月16日(金曜日)19時30分〜20時30分 国立国会図書館における障害者サービスのさらなる充実を求める要望と回答 1.国立国会図書館における音訳者等の対面朗読・資料製作のための人材の確保について   国立国会図書館独自に、音訳者等対面朗読や資料製作のための人材を募集または養成し、館内での対面朗読サービスや学術文献録音DAISY資料製作に携わる人材登録の制度を確立してください。 【回答】  ご承知の通り当館の録音図書は学術文献を対象としており、その製作には高度な音訳技術を必要とします。資料製作を担えるほどの専門性を有した人材を一定数養成することは現在の当館の体制では困難であるため外部委託により製作を行っております。また、対面音読サービスの実施は難しい状況ですが、これについては次の要望項目「2.対面朗読サービスの実施について」でのご回答の中で申しあげます。 2.対面朗読サービスの実施について (1)現在、国立国会図書館3館では図書館が音訳者を準備して行う対面朗読は実施していません。利用者が音訳者を同伴した場合の場所の提供や、音声拡大読書器、視覚障害者用閲覧用端末などの設置だけでは視覚障害者等に対する図書館利用の機会均等を保障するものではありません。そこで、図書館が自ら主体的に行う対面朗読サービスを実施し、貴館を単独で利用する視覚障害者等に対して利用の機会均等を保障してください。 (2)国立国会図書館の対面朗読(閲覧サービス)では単純に資料を音訳することにとどまらず、利用者の高度な調査・研究への対応が求められます。そのために、高度な音訳と処理技術を持つ音訳者の確保に加え、館内のさまざまな専門分野を担当する職員とも連携して対応できる体制を整備してください。 (3)来館が困難な視覚障害者等に対し「Zoomミーティング」等のアクセシブルなウエブミーティングシステムを用いて、国会図書館の蔵書を活用した高度な調査研究を行うための対面朗読やレファレンスサービスを実施できるよう体制整備を行ってください。 【回答】  当館では、学術文献録音図書の製作やテキストデータの収集・作成等によってアクセシブルな書籍等を充実させ、これらを国立国会図書館障害者用資料検索、愛称「みなサーチ」により提供すると共に、情報資源共有の基盤として「障害者用資料総合目録」を整備することで障害者サービスを実施している各種図書館等に対する支援・協力を行っております。  また、「みなサーチ」では図書・雑誌・博士論文など約247万冊分のテキストデータを提供しております。今後も引き続き学術文献録音図書の製作を進め、また、蔵書のデジタル化とテキスト化を加速させることによってより多くの幅広い利用者に資料を提供できるよう、インターネットを通じたサービスを一層強化することとしており、限られた資源をこれらに優先的に振り向けて取り組んで行く方針でおります。  対面朗読サービスにつきましては学術文献録音図書の製作と同様に対面朗読に求められる専門性を有した人材の養成には時間を要するものと考えております。繰り返しになりますが、当館としてはより多くの幅広い利用者に資料を提供できるインターネットを通じたサービスを一層強化することに、限られた資源を優先的に振り向けるという方針でおりますため、専門的人材を育成または外部から確保するための資源の配分が困難な状況にありご要望にお応えすることが叶いません。  一方で、来館サービスにおきましては視覚障害等のある利用者がお一人で来館した場合でも円滑に利用できるよう、利用環境の整備の形で利用者の求めに応じた入館の手続き、資料の検索・請求、複写の申し込み等の支援と代行などの人的サービスの充実に取り組んでおります。例えば、利用者の要望に応じて拡大鏡・電子ルーペの貸出や拡大読書器の操作支援を行うほか、点字ディスプレイ、点字キーボード、音声拡大読書器、デイジー再生ソフトまたは画面読み上げソフト等をインストールした視覚障害者用端末の利用を希望する場合は障害者閲覧室等を案内して必要に応じて操作支援を行っております。  さらにレファレンスサービスについては調査研究ニーズに応えられるように、来館が困難な場合であっても求めに応じて利用者が利用可能な郵送、FAX、メール、電話いずれかの方法で回答を行うなど柔軟に対応しておりますのでご利用いただければと存じます。 3.学術文献録音DAISY資料の製作期間について  国立国会図書館の学術文献録音DAISY資料については完成までに長期間を要するということが大きな課題です。これは年度契約上の期間の問題や委託機関が限定されているなどの問題によるものと理解しています。そこで、業者への発注の時期を柔軟に行ったり、委託機関を増やすなどの改善を行うとともに、音訳者を確保し自館製作ができる体制を整備し、製作期間を短縮するための対策を取ってください。 【回答】  当館の録音図書は他機関では製作が難しい学術文献を製作対象としております。これらの製作に当たってはその分野の専門知識と高度な音訳技術を有する多数の人員が必要ですが、現状は委託先においても製作できる人材が限られております。そのため当館が年度ごとに委託して製作できる録音図書のタイトル数及び分野に限りがあり、依頼を受け付けてから製作に着手するまでに長期間を要する要因となっております。こういった状況を改善する取り組みに令和6年度から着手します。従来から実施している一つの委託機関において複数タイトルを製作する方法に加えて、医学書、仏教関係の専門書、古文・漢文が多数引用された歴史書など音訳に高度な知識を必要とする資料を切り分けて別の委託先で製作するという方法を採用いたします。これにより年度ごとに製作できるタイトル数を少しでも増やすことが可能となり、製作期間の短縮に資するものと考えております。  こういった形で学術文献録音図書を製作すると共に、併せてテキストデータ製作を実施していくことで、全体としてより多くの視覚障害者等の方が、当館が所蔵する数多くの専門的な学術文献に速やかにアクセスできるように努めて参ります。  なお、図書館等から製作依頼をいただきましたら速やかに学術文献に該当するかどうか等の判断を行い引き続き迅速に回答するように留意いたします。 4.諸外国で製作されている音声資料等について 国立国会図書館が窓口となり提供されている諸外国において製作された利用可能な資料について、図書館の求めに応じ言語別または主題別等の目録の提供を行ってください。 【回答】  諸外国からの資料の取り寄せに使うデータベースABC(Accessible Books Consortium)は契約の関係で個人の方が直接検索することはできません。そのため利用者の皆様からはどのような資料が利用可能なのか把握しにくいという点は認識しております。そのため当館としてはマラケシュ条約に基づき諸外国から取り寄せた資料は、すべて「みなサーチ」に設けたジャンル検索の外国から取り寄せたデータに掲載して簡単に一覧で参照できるようにしております。現在70件をとくに区分せずに掲載しておりますが、今後、諸外国から取り寄せた資料が増えて行った場合はさらにジャンル別に分けて検索できる形もありうると考えており、どのような資料が利用可能になっているのかが分かりやすいように情報提供を進めて参ります。  また、諸外国からの取り寄せに際しては書名の特定に至らない場合でも広くレファレンスとして依頼を受け付けております。当館がお問い合わせに応じて諸外国からの取り寄せに使うデータベースABC(Accessible Books Consortium)の代行検索を行い検索結果一覧からご希望の資料をピックアップして提示するといったことも対応しております。今後もどのような資料が存在するかについての情報の定時に留意しながら本サービスの周知並びに利用の促進に努めて参りますのでご活用ください。