「ピアサポートができる司書等育成研修会」開催報告・レジュメダウンロード
本研修は、2019年6月に施行された読書バリアフリー法の趣旨を踏まえ、公立図書館で働く視覚障害者が同じ障害のある利用者に対して読書支援を行ううえで必要となる技術を習得し、視覚障害者等の読書環境の改善をめざすことを目的として実施した。
具体的には公立図書館で働く視覚障害者、働くことを希望する視覚障害者、そして、現在、図書館に視覚障害者の採用を検討している自治体関係者等に対して、視覚障害者が公共図書館で働く意義や目的、視覚障害者等の読書環境に関わる法・制度等の基本等の講義を行うとともに、各種読書ツールの使用方の実技指導を行った。
新型コロナウイルスの感染拡大が収まらないことから、受講はオンライン参加のみとし、運営も株式会社ラビットの会議室を本部としてオンラインで実施することにした。不慣れなオンライン研修であったが、大きなアクシデントもなく、2日間の日程を終えることができた。
1.事業名及び実施日等
- 事業名:読書バリアフリーに向けた図書館サービス研修−ピアサポートができる司書等育成研修会−
- 実施日:2021年(令和3年)1月25日(月)〜26日(火)
- 場所:株式会社ラビット(〒169-0075 東京都新宿区高田馬場1-29-7スカイパレス 402会議室)
2.内容及び当日のレジュメ(配布資料)
- 当日のレジュメ(配布資料)は令和2年度読書バリアフリーに向けた図書館サービス研修「ピアサポートができる司書等育成研修会」を実施した時点におけるものである。
- このレジュメ(配布資料)の著作権は内、「基本研修1 視覚障害者等の読書環境に係わる法・制度等の基本 (著作権法、郵便法、マラケシュ条約、読書バリアフリー法等)」が国立国会図書館に帰属し、それ以外レジュメ(配布資料)は公共図書館で働く視覚障害職員の会(なごや会)に帰属します。
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2021年1月25日(月)
司会:佐藤聖一(埼玉県立久喜図書館、日本図書館協会 障害者サービス委員会委員長)
13:00〜13:15 開講式・オリエンテーション
13:15〜13:55 基本研修1 視覚障害者等の読書環境に係わる法・制度等の基本 (著作権法、郵便法、マラケシュ条約、読書バリアフリー法等)
講師:杉田正幸(国立国会図書館、日本図書館協会 障害者サービス委員会 関西小委員会委員長)
13:55〜14:35 基本研修2 視覚障害者等の読書を支えるツールの基本 (障害者用資料、機器等)
講師:松井 進(千葉県立西部図書館、公共図書館で働く視覚障害職員の会事務局長)
14:35〜14:50 (休憩)
14:50〜15:30 視覚障害者が公共図書館で働く意義と目的(歴史、現状報告を含む)
講師:服部敦司(枚方市立中央図書館、公共図書館で働く視覚障害職員の会代表)
15:30〜16:50 パネルディスカッション 「いま、なぜピアサポートなのか−未来へ向けてのメッセージ」
パネリスト:基本研修1、2の講師、服部敦司のほか、尾崎 栞(埼玉県立久喜図書館)、中山玲子(日野市立中央図書館)の2名
16:50〜17:00 まとめ 服部敦司
17:00 (終了)
2021年1月26日(火)
司会:宮崎佳代子(千葉県立東部図書館)
9:30〜11:30 読書ツールの利用と指導T iPhoneを使用した指導の考え方とポイント
講師:荒川明宏(潟宴rット代表取締役)
11:30〜 (昼休憩 1時間)
12:30〜13:30 読書ツールの利用と指導U さまざまな読書スタイルの最新情報
講師:同上
13:30 (休憩 10分間)
13:40〜15:10 読書ツールの利用と指導V PTR3(DAISY再生機)の指導
講師:同上
15:10 (休憩 10分間)
15:20〜16:20 点訳者・音訳者等、資料製作者に対する指導・助言 (事例紹介)
パネリスト:奥野真里(日本ライトハウス情報文化センター)、斉藤恵子(横浜市中央図書館)
16:20〜17:00 全体のまとめと情報交換
17:00 (終了)
3.参加者数及び参加者の内訳
- 参加者数: 25日59人、26日43人(これに加えて、2日間の聴講16人)
※申込者総数76人。
- 参加者の内訳: 公共図書館員27人、点字図書館員20人、大学関係者10人(うち学生4人、うち視覚障害学生1人)自治体関係者他(図書館以外)19人
4.受講者の満足度と習熟度
※受講者の満足度と習熟度については、事後アンケートを実施し、それぞれ確認を行った。回答数55。
- 受講者の満足度
〇1日目満足度 4.3点/5点満点、
〇2日目満足度 4.4点/5点満点
- 受講者の習熟度
習熟度については、事後アンケートで、特に参考になったものを理由と合わせて記入してもらった。代表的なコメントを、一部編集して以下に記す。
- 図書館の障害者サービスを進めるうえで基本となる法律や制度を知ることができて有益であった。(多数)
- 視覚障害者の読書支援のためのさまざまなツールを知ることができたとともに、こうしたツールを誰もが利用し、ユニバーサルな社会(誰でも当たり前に文化を享受できる社会)の実現が重要なことがわかった。
- なごや会のこれまでの経緯や、現在図書館がおかれている状況を知ることができた。
- 公共図書館で働く視覚障害当事者から話を聞けたことが参考になった。具体的に当事者が情報提供を行う図書館で働く意義を実感できた。
- 当事者職員として、何が必要か、何をしなければならないのか、ピアサポートの立場で考えなければならないことを再認識した。
- 図書館員の果たすピアサポーターとしての役割が明確になったとともに、視覚障害学生である私自身がその重要性を理解できたことがよかった。
- ピアサポートという言葉の意味と現実、それに課題等がパネリストの方々の話を通じて知ることができた。もともと当事者体験から公立図書館におけるピアサポートについて伺いたいという希望があったので、大変参考になった。
- iPhoneについて実技を交えての説明がよくわかった。視覚障害の特性に応じた例など、当事者ならではの指導法はわかりやすい。
- 比較的新しく、まだ触れたことがない読書ツールを知ることができた。合成音声の音質など、利用者等からの問い合わせに対応する際の参考になる。
- PTR3(DAISY再生機)を操作しながらの講師の説明はとてもわかりやすかった。視覚障害者が機器を操作することの難しさや健常者の何気ない言葉が、障害者にはわかりにくいことも知った。見えるのが当たり前なのではなく、見えない人を理解して、配慮ある読書支援を考えていきたいと思った。
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作成日:2022年3月30日、最終更新日:2022年4月4日