「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する基本的な計画(案)」に関するなごや会の意見のパブコメ結果について
「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する基本的な計画(案)」は、2019年6月に成立した「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律(読書バリアフリー法)」に基づき、関係省庁等と関係者が構成する「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に係る関係者協議会」によってとりまとめられました。
なごや会(公共図書館で働く視覚障害職員の会)では、視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する基本的な計画(案)」に関するパブリック・コメント(意見公募手続)の実施について(文部科学省)と「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する基本的な計画(案)」に関する意見募集の実施について(e-Gov)の内容を常任委員会及び会員ML等を通じて意見を募り、その内容をとりまとめ2020年5月11日に文部科学省総合教育政策局男女共同参画共生社会学習・安全課障害者学習支援推進室 宛に提出しました。
その結果が2020年7月14日に「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する基本的な計画)」(案)に関するパブリックコメント(意見公募手続)の結果についてとして公表されました。
以下、、なごや会から提出した意見とその結果のみまとめましたので報告いたします。掲載はなごや会が提出した要望順なので、回答番号が前後しております。
なごや会が提出した基本的な計画(案)に関する意見とその回答
36
御意見の概要:公立図書館の中でも都道府県立図書館が障害者サービスの推進において果たす役割は大きいといえるため、都道府県立図書館には必ず障害者サービス担当部署を設置するとともに、専任職員やピアサポートのできる職員を配置するとともに、都道府県立図書館に対して「障害者サービス実施計画」を策定し、その実現を強く求めるものである。
御意見に関する考え方:基本計画V8.(1)において、「公立図書館においては、障害当事者でピアサポートができる司書等及び職員等の育成や環境の整備を行う」ことと記載しているとともに、基本計画Wにおいて、「都道府県は、域内全体の視覚障害者等の読書環境の整備が図られるよう、自ら行うべき図書館等の施策の充実を図る」ことと記載しており、いただいた御意見については、今後の施策検討の参考とさせていただきます。<BR>
26
御意見の概要:国立国会図書館における「学術文献録音資料」の制度は全国の公共図書館や点字図書館が、自館で録音資料として製作するのが困難と判断した専門書の製作を受け入れるものであることから、視覚障害者等にとって特に重要な制度であり、製作タイトル数の充実、製作期間の大幅な短縮、「学術文献資料」の製作資料の種類としてテキストデイジー・マルチメディアデイジー・テキストデータの追加という点で改善を求め、同制度の強化を望むものである。
御意見に関する考え方:基本計画V1.(1)に記載のとおり、 国立国会図書館において学術文献の録音資料やテキストデータの製作を促進し、アクセシブルな書籍等の充実に向けて取り組んでまいります。
33
御意見の概要:国立国会図書館(東京本館、関西館、国際子ども図書館)において、利用者が音訳者を同伴した場合の場所の提供だけではなく、図書館が自ら主体的に対面朗読を実施するための体制整備が必要である。
御意見に関する考え方:いただいた御意見については、今後の施策検討の参考とさせていただきます。
32
御意見の概要:国立国会図書館への来館が困難な視覚障害者等に対して図書館職員や図書館協力者が「Zoomミーティング」や「Cisco Webex Meetings」のようなアクセシブルなウエブミーティングシステムを用いて、自宅にいる視覚障害者が国立国会図書館にある全蔵書を対象としたレファレンスや対面朗読を利用することが可能となるよう体制整備を行うことを求める。
御意見に関する考え方:いただいた御意見については、今後の施策検討の参考とさせていただきます。
28
御意見の概要:「国立国会図書館と日本点字図書館が実施しているテキストデータ製作支援」について、この知見を生かし、国立国会図書館の全蔵書を対象として、全国の図書館からのリクエストによるアクセシブルな電子書籍の製作に取り組むことを求める。
御意見に関する考え方:いただいた御意見については、今後の施策検討の参考とさせていただきます。
55
御意見の概要:点字図書館が視覚障害者以外の利用者に直接サービスを実施しようとする時、壁になるのが、利用対象を視覚障害者に限定している制度や点字図書館の運営基準等であるため、こうした制度や基準の見直しが急務であると考える。
御意見に関する考え方:基本計画V1.(2)に記載のとおり、点字図書館等の利用対象者の範囲について、アクセシブルな書籍等を必要とする方が利用できるよう制度面を含め検討を行ってまいります。
51
御意見の概要:視覚障害者への資料の提供において有力な手段となっている郵送貸出だが、これに関連する法律や制度の成立が古く、読書バリアフリー法がめざす「視覚障害者等」の支援においては対象となる障害種別が限定されている等、制限が多く、活用が難しいが、郵送貸出は視覚障害者以外の障害者への資料提供においても有力な手段であるため、自宅にいて、ネットを通じて入手できるデータではなく、アクセシブルな電子書籍等のうち何らかの記録メディアでの提供を望み、しかも来館の困難な障害者が活用できるようにするため、関連する法律と制度の改正が必要である。
御意見に関する考え方:いただいた御意見については、今後の施策検討の参考とさせていただきます。
60
御意見の概要:国立国会図書館のウェブサイトを視覚障害者等が快適に使えるようアクセシビリティの改善を進めるとともに、「視覚障害者等用データ送信サービス」からストリーミングやダウンロードを容易に利用できるようにするために、専用の検索ページの設置が望まれる。
御意見に関する考え方:いただいた御意見については、今後の施策検討の参考とさせていただきます。
67
御意見の概要:「公立図書館等」に含まれているのだろうが、学校図書館におけるサピエ図書館の必要性についてはもっと強調されてよいのではないか。小中高を合わせると、かなりの数になるし、年会費を支払っての利用となると、ハードルは高いため、国からの補助金の増額等安定的な運営体制に向けた支援策が必要である。
御意見に関する考え方:御意見のとおり学校図書館は「公立図書館等」に含まれますので、学校図書館のサピエ図書館の利用についても配慮してまいります。また、基本計画V2.に記載のとおり、サピエについては安定的な運営ができるように支援を推進してまいります。
84
御意見の概要:現在、すでに流通しているリフロー型のEPUB形式の電子書籍では読み上げ機能をONにするだけですぐに利用可能になるものが多く出回っているので、著者との関係からONにすることに消極的な出版者に対して具体的な対応が望まれる。
御意見に関する考え方:基本計画V4.(3)に記載する出版関係者との検討の場等を通じて検討してまいります。
107
御意見の概要:図書館への電子書籍サービスの導入の推進に関する「適切な基準」については、書籍そのものがアクセシブルであるのはもちろん、検索や閲覧の操作もアクセシブルであることを大前提に、基準の作成に際しては障害当事者も交えて検討し、よりユーザビリティの高い基準とすべきである。また、図書館に対しては電子書籍サービスを導入する際はアクセシビリティが担保されているものを採用するよう働きかけることが望まれる。
御意見に関する考え方:基本計画V4.(4)に記載のとおり、「適切な基準」については、書籍そのものだけではなく「民間電子書籍サービス」を対象とした、「図書館における」基準として検討してまいります。なお、基本計画Wに記載のとおり、当事者を含む「多くの関係者の理解が必要」となることに留意します。
111
御意見の概要:地方公共団体がアクセシブルな電子書籍等を利用するための点字ディスプレイ、デイジープレイヤー等の端末機器等の給付を行うに際して、その対象者を視覚障害で身体障害者手帳3級以下に拡げることと、視覚障害以外の障害者にも拡げるよう、国として地方自治体に対して具体的な対応策が望まれる。
御意見に関する考え方:基本計画V6.に記載のとおり、地方公共団体による端末機器の給付等について推進してまいります。
139
御意見の概要:国立国会図書館においても対面朗読サービスを主体的に実施し、「学術文献録音資料」の制度を強化するためには音訳者等の資料製作者を館として養成し登録する必要があると考える。
御意見に関する考え方
いただいた御意見については、今後の施策検討の参考とさせていただきます。
126
御意見の概要:ピアサポートについては障害者サービスの充実と雇用促進の観点から、「視覚障害者等」にとって図書館が大きな可能性を持つ職場であることを各方面に対して発信する必要があり、ピアサポートの役割として、同じ障害のある利用者へのサポートに加えて、点字・音訳等、資料製作者への助言・指導も含まれると考える。また、司書及び司書補の養成課程に障害者サービスを必須科目として組み込むことが望まれる。
御意見に関する考え方:基本計画V8.(1)において、「公立図書館においては、障害当事者でピアサポートができる司書等及び職員等の育成や環境の整備を行う」と記載しており、いただいた御意見については、今後の施策検討の参考とさせていただきます。また、法や基本計画の趣旨に鑑みて、現状の養成課程において適切に学修するよう関係大学等に対して周知します。
130
御意見の概要:この計画案では対象外になっていると思われる社会福祉協議会に所属するボランティア団体もそれぞれの地域で視覚障害者等に対して支援活動を行っているため、公立図書館や点字図書館等のネットワークに組み込み、製作基準の共有やノウハウ等の習得や研修への参加が可能になるよう対応を求める。点訳・音訳等、資料製作の活動は、社会や時代の変化に伴い、これまでの善意の無償のボランティアでは成り立たなくなっていることを踏まえ、点訳・音訳の活動は一定有償とするために財源を確保し、支援策を充実し、継続する必要があると考える。また、製作人材については単純に人数の確保の問題にとどまらず、指導者の不足も深刻であるため、安定的な人材の確保と技術の維持・発展のためにも、点訳、音訳等の指導者の育成と身分保障を行う制度が必要である。
御意見に関する考え方
基本計画V8.(2)に記載のとおり、点訳者・音訳者、アクセシブルな電子データ製作者等の人材の養成を図ってまいります。
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作成日:2020年8月2日、最終更新日:2020年8月2日